イギリスではロンドンに次ぐ、観光都市のエジンバラ。
この場所は、過去に疫病のペストが大流行。
その際に発生源である地域を、人々が住んでいるにも関わらず「生き埋め」にするという、ロックダウンならぬシャットダウンした恐ろしい黒歴史があります。
そんなことも理由か、幽霊が出る街としても有名だったりも。
というわけで、17世紀のエジンバラのペストの歴史を、私が実際に現地で見た驚愕の歴史の爪痕と共にご紹介します。
まるで映画の世界ですが、これは本当のお話…
新型コロナウイルスと相違点が多く、少しドキッとする内容です。
【この記事の内容一覧】
ヨーロッパで有数の過密都市

17世紀当時のエジンバラは、ヨーロッパでも有数な人口過密都市でした。
3方が切り立った崖の斜面に都市が形成されている特異な地形となっており、山手の高台には上流階級、そして崖下の下流には貧困層が住んでいました。
いつの時代も、山手には金持ちが住むもんです。

こちらが上流階級が生活していた、崖の上にある街。
大通りは、エジンバラ城に続く、ロイヤルマイルという目抜き通り。
街歩きの様子はこちら
【動画】▶︎【スコットランド旅行】エジンバラの世界遺産|旧市街を歩く
ロイヤルマイルの左右には、崖の斜面に沿って下流へと続く”Close(クロース)“と呼ばれる小道が点在。

きらびやかな上流と違い、下流の貧困地域は日も差し込まず、まるで地下のような暗い環境。
夏場でも最高14度、冬は極寒のエジンバラで、日の光も浴びれずに惨めな暮らしを強いられていました。
Closeは「閉じている」という意味では無く、道と道の間が「近い」という意味。
17世紀には300以上存在したそうですが、現在は60ほどになっています。
詳しくは【エジンバラ】ちょっぴり怖い?黒歴史の路地”クロース(CLOSE)”の話に書いています。
劣悪な環境の中、ペストが蔓延

貧富の差も、差別も激しかった時代。
上下水道も整備されていなかったため、生ゴミや汚水(排泄物など)は山手の家々の窓から、クローズにそのまま捨てられて、下流の貧困層の住む地域に、垂れ流しの状態に…
そのため、下流の地域は常に糞尿のひどい悪臭が漂っていたと言います。
その後、衛生環境が劣悪な下流の地域にて、疫病のペストが蔓延し、大流行してしまいます。
致死率ほぼ100%の死の病

ペストは感染すると、皮膚が内出血を起こし黒紫色になることから「黒死病(Black Death)」とも呼ばれています。
致死率はとても高く、60%〜90%と言われており、放置すると肺炎などの合併症でほぼ100%死亡したそう(生存率は2%だったというデータも)
「ペスト」はドイツ語の”Pest”から来たもので、英語では”plague(プレーグ)“と言います。
まだ治療法がなかった当時において、感染することは死を意味することでした。
ん?治療薬がなくて、肺炎になる疫病ってなんか聞いたことあるな?
現代は治療薬がなくとも、衛生環境や医療技術が違うので、当時のエジンバラの比にはなりません。
しかし、この時代に新型コロナウイルスがパンデミックを起こしていたら、後世ではペストと同等に扱われていたかもしれません。
では、困り果てた政府がとった対策とは。
それはなんと、街を丸ごと埋めてしまうといった恐ろしい行動でした!
【幽霊が出る街】
スコットランドのエジンバラは「クローズ」と呼ばれる細い路地が沢山このクローズとは、道と道の間が狭い(close)からと言う意味だそう
ペストの流行で町ごと埋められてしまった過去を持つこの街は幽霊の噂がチラホラ…
エジンバラ町歩き動画→https://t.co/q2JqhRChvD pic.twitter.com/6mNjx26n23
— あっこぷ|akkop.net (@kusano_akiko) February 28, 2020
政府が街を「生き埋め」に

ペストの感染拡大の勢いはすざましく、4万人いた人口が6000人にまで減少。
特に大流行していた貧困層の暮らす、下流地域に頭を悩ませた政府が取った行動。
それは、都市封鎖。
都市封鎖といえばロックダウンを連想しますが、出入りの制限などという、そんな甘っちょろいことではありません。
その名の通り、完全なる出入り口の封鎖。
そう、家から出れない状態に閉じ込めること。
感染者が逃げ出すことを恐れた政府は、事前に知らせることなく、外側から家の出入りや窓を塞ぐという暴挙に出ます。
閉じ込められてしまった者たちは、そのまま生き埋めになったと言われています…
マスク2枚くれた政府が、神様に見えてきました…(笑)
死神と呼ばれていたペスト医師

治療薬はなくとも、もちろんペストの治療に当たる医者がいました。
それがこの、不気味な雰囲気のペスト医師。

当時ヨーロッパでは、瘴気(しょうき)論が唱えられており、病気は悪い匂いが運んでくるものと考えられていました。
ちなみにこの奇妙な格好は、いわゆる防護服。
くちばしのようなマスクの中には沢山のハーブが詰められており、これは悪い匂いで病気になるなら、いい香りで浄化すれば良いという考えよるもの。
そして香料をふんだんに塗った黒のコートをまとい患者宅に訪問。
しかし、当時はまだ治療薬のない時代。
これといった治療法がなく、ハーブやお香を炊いた壺で浄化(当時は消毒的な考え)をすることしかできなかったそう。
そのため、ペスト医師に診てもらうことは、すなわち死を意味することもあり、当時は死神と呼ばれていました。
ペスト医師はヤブ医者だった

治療薬がないことは、医師にとってもリスクが高いこと。
進んでやりたがる仕事ではないため、ペスト治療を行う医師に対しては、政府が巨額の報酬を支払っていたそうです。
そのため、二流のヤブ医者や、稼ぎの少ない若い医師などが主に活動。
中にはほぼ医療の知識を持たないものが、お金欲しさにペスト医師を名乗ることもあったそう。
有名なペスト医師に、あの大予言で有名な「ノストラダムス」がいます。
もしかして、あの人類滅亡の日って占星術のズレで2000年じゃなくて2020年だったとかじゃないよね…なんて考えていたら、なんだか怖くなってきました(笑)
日本人の北里柴三郎氏が治療薬を発見

ヨーロッパだけで全人口の4分の1~3分の1にあたる2500万人が死亡したとされているペスト。
その後、19世紀に日本人医師の北里柴三郎によって原因菌が突き止められて、ペストは死の病では無くなりました。
新型コロナウイルスも富山化学がアビガンで臨床実験がスタート。
この記事を書いている今はまだ、はっきりとした確証は取れていませんが、もし治療薬として承認されたら、これまた日本人として誇らしいこと。
そして、なんだか時代が巡っているような気がしてなりません。
黒歴史として最近まで忘れていた

話は戻り、ペストの蔓延により埋められた地下都市の上には市庁舎が建てられ、その過去は、エジンバラの黒歴史として封印し、人々の記憶からも忘れ去られていました。
しかしなんと、その地下都市が近年に発見!
それが1980年と結構な最近っぷり!(笑)
その後現在では、この黒歴史ときちんと向き合おうと発掘や調査が行われ、その一部は観光ツアーとして実際に行くことができます。
スコットランドのエジンバラには最近まで封印された闇歴史があるのをご存知ですか?
丘の斜面にある旧市街⛪️
18世紀前半は下の方で暮らす貧困層にペストが流行すると街をそのまま埋めてしまいました!!
近年になり掘り起こされ、ガイドツアーで行くこともできますhttps://t.co/3Tfn3sqBi4 pic.twitter.com/E29vcCTROT
— あっこぷ|akkop.net (@kusano_akiko) January 19, 2020
地下都市にはツアーで行ける

ツアーの中で一番有名なのが”The Real Mary King’s Close(リアル・メアリー・キングス・クロース)“。
エジンバラ市庁舎の地下に埋められた、地下都市を徒歩で巡ることができる歴史ツアーです。

しかしこのツアー、実はガチで幽霊が出ることで有名。
霊感のある人は気分が悪くなり、途中で退出する人もいるんだとか…
宜保愛子さんが女の子の例を除霊?したらしく、ツアー中にガイドさんに説明された時は、ちょっと笑ってしまいました(いや、ガイドさんはいたって真剣でしたよ!)
超怖がりな私も、歴史への興味が勝ち、ビビリながら参加してきました!
その様子は【エジンバラ】恐怖の地下都市ツアー|リアル・メアリー・キングス・クローズに書いたので、合わせて読んでみてください。
YouTubeはこちら
エジンバラの街歩きの様子はYouTubeにupしました。
内部は撮影できませんでしたが、周辺の様子は撮影したので、ぜひみて見てください!
動画▶︎【スコットランドVlog】ペストで生き埋めの地下都市オカルトツアー
ペストの歴史に私たちが学ぶこと

合併症として肺炎を引き起こすことや、治療薬がない事など、致死率は違えども、ペストと新型コロナウイルスのパンデミックは似ていることが多々あります。
エジンバラでペストの歴史に触れて「ヘぇ〜、怖いなー」なんて呑気に思っていたのに、数ヶ月後にまさか自分が同じような世界に直面するとは思ってもみなかったので、歴史は繰り返すと言いますが、人生何が起きるやら。
ヨーロッパの人々は、このような感染症での迫害や差別の歴史が観光ナイズされていることで身近に感じているのか、初動は比較的敏感でしたが、日本では他人事感が強く、温度差があるように感じました。
感染のリスクが身近にある今、17世紀のエジンバラのペストパンデミックの歴史に触れることで、今できることをを改めて考えたいと思います。
エジンバラのその他のツアーについては【イギリス】幽霊が出る街のゴーストツアーがマジで怖そうな件に書いたので、合わせて読んでみてください。
エジンバラについて詳しくは【スコットランド旅行】エディンバラ観光まとめ!治安や持ち物、必要な日数は?に書いています。
エジンバラの観光チケット予約はKlook公式サイトからだと日本語で予約できます。
公式サイトの予約より割引されてることが多いので、予約前に見比べてみるがオススメです。